男の名前はロン。ロデオと酒と女の日々をおくり、ある日ロデオで賭けをするが、負けると金を払わず逃げ、その日暮らしのトレーラーハウスに戻った瞬間に、膝から崩れ落ちる。病院のベッドで目覚めると、医師が彼に告げた。HIVの陽性反応が出て、余命30日であることを。有名俳優のロック・ハドソンがエイズであることが公表され、同性愛者しかかからない病気、そんな根拠のない噂が蔓延していた時代。同性愛者でもないのになぜ!?と納得できないロンは、図書館で新聞記事を閲覧し、情報を漁る。そして自分はエイズであるという真実がつきつけられる。生きたい欲求にかられた彼は、自分を診察した女性医師イブを訪ね、AZTという未承認の薬を処方してくれるように頼むが、断られる。そこで彼はメキシコへ渡り、毒性の強いAZTではなく、アメリカでは未承認だが効果がみこめる薬を国内に持ち込み、患者たちにさばき始める。彼に慈善の心などなかった。素行が悪く、ゲイ・コミュニティーに嫌悪感を持つロンが、販売ルートを広げるのは難しい。そこで彼は、美しいトランスジェンダーのレイヨンを仲間に引き入れる。日本をはじめ、世界中から仕入れた薬をさばくために考え出したシステムが「ダラス・バイヤーズクラブ」だった。会費を募り、必要な薬を無料で配る。名目的に薬の売買はない。その彼らの前に立ちはだかったのが、AZTを推奨し始めた医師たちと製薬会社に政府。ロンは、弁護士を使い、 “個人の健康のために薬を飲む権利を侵害する”国の動きに対して徹底抗戦の構えをとる。彼を見殺しにしようとする世界に対する戦い。一人の男が、生きる権利のための戦いに挑んでいく。