漱石のこころ癒やした名筆「無絃琴」が初公開
夏目漱石(1867~1916年)が晩年を過ごした住居「漱石山房」(東京・早稲田南町)に飾っていた書「無絃琴(むげんきん)」が、横浜市の神奈川近代文学館の没後100年特別展で初公開されている。近世の名筆と称される愛媛県松山市・円光寺の明月(めいげつ)和尚(1727~97年)の作で、松山時代に親交を深めた地元の実業家・俳人村上霽月(せいげつ)の協力で手に入れた。
「無絃琴」は中国の詩人・陶淵明(とうえんめい、365~427年)が酔えば弦のない琴をなで、心の中で演奏を楽しんだという故事に由来する。漱石は俗世を超越した境地を意味するこの言葉を好み、「吾輩は猫である」や「草枕」などの作品で使っている。
書は神奈川県内の遺族が所蔵し、同館に貸し出した。特別展「100年目に出会う 夏目漱石」は5月22日(月曜休館、5月2日は開館)まで。