国の文化審議会(宮田亮平会長)は13日、愛媛県今治市宮窪町沖に本拠地があった能島村上家が発給した海上通行証「過所船旗(かしょせんき)」と同家伝来の文書群を重要文化財(歴史資料)に指定するよう下村博文文部科学相に答申した。
 対象は「過所船旗 天正九年四月廿八日」「能島村上家文書」(いずれも山口県文書館所蔵)と「過所船旗 天正九年三月廿八日」(和歌山県立博物館所蔵)。
 両館などによると、過所船旗は航行の安全、自由を保障した。中央に能島村上家の家紋「上」の字が意匠化され墨書きされている。2点とも同家全盛期に当主だった村上武吉が発給した。
 瀬戸内の中世史に詳しい松山大の山内譲教授によると、天正9(1581)年は信長による毛利攻めが活発だった時期で、羽柴秀吉が村上家を信長側へ取り込もうとしていた。翌年には本能寺の変が起きている。山内教授は「村上家が発給した過所船旗で現存するのはこの2点だけ。海賊研究が広く知られるきっかけになるだろう」と話した。