京都の大蔵流と東京の和泉流が異例の競演をする「東西狂言」が29、30の両日、創建100周年を迎えた内子座(愛媛県内子町内子)で開かれる。演目の一つは内子を舞台とした新作「かみあそび」。競演に加えて町内の子どもが多数出演する点も画期的で、出演者の稽古にも熱が入っている。
 17日の内子座。大蔵流狂言師の茂山千三郎さん(52)と和泉流狂言師の野村万蔵さん(50)、地元の子どもでつくる「茂山狂言クラブ」のメンバーがそろい稽古が始まった。子どもの張りのある声が舞台に響き渡る。
 「かみあそび」は、茂山さんが町内を取材して書いた作品。内子の名産を各所に取り入れる趣向で、野村さんは小田地区の灯籠を抱えており、五十崎地区の大凧(だこ)も登場した。
 子どもには難しいせりふが続くが、内子小学校6年の児童(11)は「かむこともあるけど、茂山先生の指導は分かりやすい」と見事に演じた。
 茂山さんは稽古中に何度か演出を変更するこだわりぶり。作品は、狂言を内子に根付かせる長期的な試みの端緒となるだけに、真剣な表情で「何とか作品が広まってくれれば」と思いを語った。
 今公演のポイントは、演じ方や見せ方が異なる両流派がいかに競演するかにもある。もう一つの競演演目、古典「清水(しみず)」では、29日と30日で茂山さんと野村さんが役を入れ替えて臨む。
 茂山さんが和泉流を「緊張感と重厚感を持っておられる」と形容すれば、野村さんが大蔵流を「親しみやすくサービス精神旺盛」と評するほどの違い。野村さんは「演じる方は大変」と笑いながら、「両流派のものをぶつけあうことで生まれる面白さを見てほしい」と楽しみにしていた。
 公演の問い合わせは内子町町並・地域振興課=電話0893(44)2118。