愛媛県松山市在住の漫画家小林有吾さん(35)が今月、人気作品を数多く送り出してきた「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で初の週刊連載をスタートさせた。愛媛の少年を主人公にしたサッカー漫画「アオアシ」で、「全力を出し、サッカー好きも、そうでない人も楽しめる作品にしたい」と意気込んでいる。
 小林さんは27歳で漫画家デビュー。「アオアシ」は、粗削りながら強烈な才能を秘めた少年、青井葦人(あおい・あしと)が、東京の強豪クラブに見いだされ活躍していく姿を「熱い」展開で描いていく。
 スポットを当てるのは、これまでのサッカー漫画であまり取り上げられなかったJリーグクラブの育成組織「ユース」。関東のJクラブ施設やユースチームの試合を半年間綿密に取材してきた。
 監督やスタッフ、柏ユース出身で日本代表も経験した工藤壮人選手らにインタビュー。「ユースの意義」や「選手育成のあるべき姿」について質問をぶつけ、「作品に欠かせない現場の生の声を聞けた。中身の濃い準備ができた」と自信をにじませる。
 物語の「出発の地」には愛着ある愛媛を選んだ。5日発行号の第1話には、主人公の通う「双海浜中学」をはじめ、随所に県内の地名を織り交ぜている。松山市北条地域や伊予市双海町の景色をモデルにした浜辺も描いた。今後、舞台は東京に移るが、方言や回想シーンなどで「愛媛色」を残したいという。
 「プロになるには上京」が当たり前の世界で、漫画家を志した24歳からほとんど一貫して古里で作品を紡いできた。「地元には、支えてくれる家族や友人がいて、優秀なスタッフもいる。週刊連載でもハンディは感じない」と迷いはない。
 第1話は漫画家人生初の巻頭カラーページを飾り、読者からも好評を得た。「愛媛にいる自分にこそ描ける世界があるはず」との思いで、さらに執筆に力を入れている。