愛媛県松前町北伊予地区の歴史を1988年から「北伊予の伝承」として記録している同町神崎の町東公民館がこのほど、第13集を発刊した。昨年、戦後70年を機に編集委員の住民が聞き取った戦中戦後の体験談をまとめたほか、地区で古くから続く年中行事「ご祈祷(きとう)」の特徴や変遷を調査した。
 昨年7月に公民館で開いた座談会には、元軍人や疎開経験者、旧満州(中国東北部)からの引き揚げ者らが出席。編集委員12人は当時の写真を集め、追加取材したり住民の手記を引用したりして、戦時中から昭和20年代後半までを三つの時期に分けて編さんした。
 1945年に国鉄北伊予駅が爆撃された際の「風邪気味で自宅で休んでいると、突然東の方から爆音とバリバリバリという機銃の音に、これが戦争かと驚いた」との証言や、戦後に「NHKのど自慢で町出身の明石光司さんが日本一になった」という逸話など、地元の印象的な記憶を聞き書きしている。
 A4判66ページで2700部作成。同地区で全戸配布し、小中学校などにも置く予定にしている。編集委員長の高石勤さん(76)は話し手の言葉遣いを可能な限り残すよう重視したと振り返り「話しただけではあいまいになりそうな歴史を文字や写真、図表にして次の世代に残していきたい」と話した。