インターネットを通じて、個人から小口資金を募るクラウドファンディング(CF)が愛媛県内で活発化してきた。活動資金の不足に悩む中小企業などが資金調達の新たな手段として役立てている。新事業への取り組みを目指すNPOと出資者のマッチングサイトも開設され、広がりを見せている。
 「クッキーを入れる木製ボックスを50~60個製作したい。そのための費用にご協力いただけないでしょうか」
 国内大手のCFサービスサイトに9月19日、障害者による菓子箱製作への支援を呼び掛けるプロジェクトが掲載された。発案したのは松山市のイベント企画会社従業員野本英教さん(44)。目標金額は50万円で、募集期間として設定した60日間で集めなければ資金を得られない。
 サイトでは障害者の厳しい雇用環境やプロジェクトへの熱意を動画などでアピール。じわじわと出資の申し込みは増え、11月7日に目標額を達成した。最終的に県内外から56万2千円が集まり現在、資金を元手に市内の就労継続支援事業所で菓子箱を製作している。野本さんは「多くの人から事業への賛同を得られ、励みになった」と喜ぶ。
 地域経済の活性化に向け、県も本年度から県内企業のCF活用支援に乗り出した。CF運営会社と企業を仲介しているほか、普及セミナーを各地で開催。初年度はサッカーJ2の愛媛FCによるストライカーの獲得費用や八木酒造部(今治市)の希少酒米の購入費など7社の7事業でCFを募り、全国の投資家約950人から計3940万円を調達した。