愛媛県宇和島市吉田町の秋祭りの名物で山車、牛鬼が練り歩く「おねり」。国の重要無形民俗文化財指定を目指し市が調査を進める中、おねりを描いた絵巻「利根本」が16日、地元の吉田公民館で住民に初公開された。
 「利根本」は全長約9.0メートル、幅約0.2メートルの彩色絵巻。冒頭の文章や所有者の話によると、吉田藩で小姓だった利根親馨(ちかよし)が1917(大正6)年ごろ描いたとみられる。
 1835(天保6)年の森太左衛門筆の原本を写したもので、山車に掛けられた幕の文様や色使いが緻密に描かれている。鹿踊りの歌詞など、随所に独自の注釈文がつけられ、単なる写本ではなく記録を意識したと考えられる。
 愛媛県史に一部の写真が掲載され、研究者に存在は知られていたが、現物は約30年間不明だった。親馨の子孫である所有者が愛媛新聞記事で文化財指定に向けた活動を知ったことをきっかけに、初公開が実現した。
 「利根本」などは4月23日から県歴史文化博物館の特別展で展示される。