愛媛県松山市平井町の小野小学校校庭にそびえ、樹齢900年と言われた大樹「与力松」で作られた文殊菩薩(ぼさつ)像を、同市水泥町の大西言志さん(67)がこのほど、小野小に寄贈した。神社仏閣の彫刻師だった亡き父務さんが約30年前、知恵の仏様に児童を見守ってもらおうと制作したが、贈る機会を逸したままになっていた。大西さんは「父の願いがかなってうれしい」と喜んでいる。
 与力松は高さ35メートル、根回り6・5メートル。国の天然記念物に指定され、愛媛ゆかりの俳人松根東洋城は「うららかや昔てふ松の千歳てふ」と詠んでたたえた。マツクイムシの被害でやむなく1980年に伐採されたが、校内には「与力松2世」が植えられ、校歌でも歌われるなど、その存在は今も学校生活に深く根を下ろしている。
 文殊菩薩像は観音開きの「厨子(ずし)」に納められ、高さ約75センチ、幅約40センチ。務さんが与力松で作った仏像4体のうちの1体で、小野小に寄贈する予定だったが、大西さんの親族宅に保管されたままになっていた。大西さんも学校側も、贈られなかった理由は時の経過でよく分からないという。