愛媛県松山市出身の書家「三輪田米山」(1821~1908年)の名前が子孫の男性(41)により商標登録されていることが分かった。美術関係者らから普及・顕彰や地域振興への影響を懸念する声が出ている。男性は「無関係の企業などによる先願登録を防ぐため。これまで同様、多くの人に名前を使って広めてもらいたい」としている。
 男性は2012年11月、文具類、書籍、書画、お守りなどを指定商品として「三輪田米山」の商標登録を出願。「今後、第三者が登録、独占してしまうと、正当な顕彰活動ができなくなる恐れがある」と、米山との関係性などを示す資料提出を重ね、14年2月に登録された。
 特許庁によると、歴史上の人物名について、商標を独占することで公序良俗を害する恐れがあるとの懸念から、09年10月に審査判断基準を追加。著名性や地域での利用状況、出願目的、出願者との関係性などを考慮して判断しているという。近年では、企業が出願した幕末の思想家「吉田松陰」(07年登録)に出身地の山口県萩市から異議申し立てがあり、登録が取り消されたケースがある。
 男性は「展覧会や研究書籍の発行に問題があるとは考えていない。子孫として継続的な顕彰活動をしていきたい」とし、「次の世代にも広く米山の名を知ってもらえるよう名前を使ってもらえれば」と話している。
 立命館大の宮脇正晴教授(知的財産法)は「商標権の効力は指定、類似商品のみ。『三輪田米山』という対象を示す使用は問題なく、展覧会や米山に関する書籍のタイトルに使うことは権利侵害にはならないだろう」と説明している。