「エンジン室、真っ赤な炎」 今治・大下島船舶火災で救助者証言
12日夜に愛媛県今治市関前地区の大下島の港内で、県議選の投票用紙を開票所に運搬後の市職員らを乗せた海上タクシーが炎上し、1人が死亡、1人が行方不明となっている事故から一夜明けた13日、救助された市関前支所職員川本正彰さん(57)は「エンジンルームから出た真っ赤な炎が迫ってきて怖かった。5分救助が遅かったら…」と当時の様子を生々しく証言した。
川本さんによると、大下島で2人が下船し、岡村島へ向かおうとした午後9時半ごろ、船室の畳の隙間から黒煙が上がり、船長(88)がエンジンを止めた。床の点検口からエンジンルームをのぞくと炎が見え、皆で出入り口のある船首へ移動していると窓の外に炎が広がったという。
川本さんは亡くなった同僚の村上国広さん(53)と手分けして118番し、大下島で下船したばかりの投票管理者の男性(71)にも助けを求めた。
火が迫る中、川本さん以外の4人は救命胴衣を着ける間もなく、冷たい漆黒の海へ飛び込んだ。川本さんは船のへさきの鎖にしがみつき、爆発の恐怖に耐え待つこと数分、助けに来た船を見つけた。「距離は10メートルほどだったと思うが、100メートルに感じるほど必死に泳いだ」と振り返る。
救出された後は、懐中電灯で海面を照らし、船長と立会人の男性(64)に発泡スチロールの浮きを渡して救出。約2時間後に村上さんを発見したが、手遅れだった。